大会長あいさつ

第20回日本認知症ケア学会大会開催にあたって
第20回日本認知症ケア学会大会
大会長 繁田 雅弘
「あんなこと言わなければよかったです.後悔しても遅いけど.妻は嫌な気持ちだと思います.言わなくてもいいことだった.けど、つい大きな声になりました.がまんがきかないんです.気が付いたときには大きな声を出してるんです.後から後悔するんです.これも病気の症状ですか?忘れっぽいのより苦しいです.その後は忘れた振りをします.本当は忘れてないけど.他のことは忘れるけれど.嫌なことは忘れられないから」*1
「何をしてあげたらいいのか迷います.もともとほとんど会話のない夫婦でしたから、認知症になったからといって、何かしてあげようと思っても、本人が何をしてほしいのか分からないです.はじめは認知症の本をたくさん読んだのですが.結局どうしたらよいかわからなくて.本人は、助けてほしいけど、でも放っておいてほしいんです.放っておいたほうがいいと思うけど、私は放っておけないんです.ゴロゴロばかりしているといけないと思うんです.だからいろいろ言うんです.でも本人も言われるのが嫌そうで.認知症が進んでしまうと心配です」*2
認知症のことをもっと勉強したい。しかし,しっかり勉強するための教科書が少なく、研修や勉強の機会がなかった。そこで,認知症ケアの学会をつくることになりました。20年前の話です。介護福祉士、介護支援専門員、ヘルパー、社会福祉士、精神保健福祉士、作業療法士、理学療法士、衛生管理者、看護師、保健師、医師等,さまざまな職種が集まりました。自分たちのそれぞれの専門について、他の職種に教えることからはじまりました。そして、それぞれの職種の支援の考え方も徐々に学んできました。互いの職種の強みと弱みとを理解できるようになりました。
2019年に日本認知症ケア学会が成人式(二十歳)を迎えます。認知症の人や家族の気持ちも以前よりは理解できるようになりました。これからさらに多職種が協働し、認知症の人の言葉にできない想いを引き出し、戸惑う家族の力になりたいと思います。今回の学会のテーマは「認知症という希望」です。認知症の人と家族の尊厳が守られる社会が必ずや実現するという希望、そしてどんな認知症の人も家族も幸せになれるという希望について、みなさんと話し合いたいと思います。
 
*1 特定のアルツハイマー型認知症の人ではなく、複数の人の訴えを組み合わせたものです.
*2 認知症の人の一人の家族ではなく、複数の家族の話を組み合わせたものです

大会概要

日 時 2019年5月25日(土)~26日(日)
会 場 国立京都国際会館(〒606-0001 京都市左京区宝ヶ池)
大会長 繁田 雅弘(東京慈恵会医科大学)
専門士単位 8単位(参加),+3単位(発表)
参加費・参加申込方法 参加申込(⇒こちらのページ)にてご確認ください.

抄録集

日本認知症ケア学会誌第18巻第1号が大会抄録集となります.会員の方には,5月上旬ごろ送付させていただきます.購入をご希望の方は事務センター(TEL:03-5206-7431)までお問い合わせください.