ご挨拶

  私の認知症ケアの原点は,特別養護老人ホームに入所されていたAさん(女性,80歳代)との出会いです.いまから二十数年前,“痴呆”と称していた時代の話です.私は,老年看護学実習の指導教員として,学生数人とそのホームに通っていましたが,私自身,“痴呆”を体系的に学んだわけでもなく,その人を理解するのに必死でした.Aさんは,学生が担当した方ではありませんでしたが,いつも険しい表情で廊下を車いすで行き来していて,気になっていました.時には,飾られている生け花の葉を口に入れることもあり,“徘徊”“異食”がある痴呆性老人とみていました.ただ,あいさつをすると手を止め,にこっと会釈をしてくださり,黙々と車いすを動かす姿は本来のAさんではない気がして,ますます気になる方になっていきました.ある日,玄関先まで来られていたAさんをみかけ,思いきって戸外の散歩に誘いました.季節は梅雨入り前,眼下に青い田んぼが広がる場所まで行くと,頭を上げゆったり見渡しながら,「あぁ,田んぼがようできちょる」と小さくうなずいていました.生垣の青葉に手を伸ばし,感触を確かめるようにさわり,「新芽やな」とつぶやいていました.のちに,Aさんは農家の嫁として働き者であったと聞き,すべてがつながりました.Aさんはもっとやりたいことがある,それができない環境のなかで自分なりに探索しているのかもしれないと思いました.Aさんといっしょに田んぼを眺め,青葉に触れ,初夏を感じたあの瞬間が忘れられません.
 第26回日本認知症ケア学会大会(以下,大会)のテーマは「認知症とともに生きる人とともに創る」です.2024年1月,すべての認知症の人は基本的人権を享有する個人と明記された『共生社会の実現を推進するための認知症基本法』が施行されました.そして,間もなく『新しい認知症観』に立つ認知症施策推進基本計画が動き始めます.今回は,認知症ケアのステージを上げなければならないこのタイミングでの開催となります.認知症とともに生きる人とともにある大会として,みなさまそれぞれが認知症の人との出会い体験になぞらえた認知症観を語り,『新しい認知症観』の意味を考えるきっかけを提供できればと思っています.そして,認知症とともに生きる人とともに,なにを創るのか,関係? 環境? ケア方法? 社会? 価値観? 文化? 夢のある,可能性いっぱいの大会になるよう,実行委員(オブザーバーとして希望大使が参画)と共にプログラムを準備いたします.
 久しぶりの九州・福岡開催です.ラーメン,もつ鍋,明太子,ごぼ天うどんなどなど博多グルメを楽しみつつ,認知症ケアの次なるステージの創造に向け英気を養ってください.心よりお待ち申し上げております.
第26回日本認知症ケア学会大会
大会長 三重野 英子  


開催概要

テーマ 認知症とともに生きる人とともに創る
大会長 三重野英子(大分大学医学部看護学科)
開催方法(参加区分)
A.現地開催(Web(オンデマンド)配信含む)

 会場にお越しいただき,参加いただく開催方法です.

 また,Web配信(オンデマンド配信)も視聴できます.


B.Web(オンデマンド)配信のみ

 第26回大会HPにて視聴できます.

 参加のご案内はこちら

会期・会場
現地開催:

2025年5月31日(土)~ 6月1日(日)

 [会場]福岡国際会議場(福岡市博多区石城町2-1)


Web(オンデマンド)配信:

2025年6月23日(月)~ 9月30日(火)

参加費

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演題登録期間

2024年10月1日(火)~12月5日(木) 12月20日(金)14:00 (延長しました) 

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専門士単位(会期終了後に付与)
参加:

8単位

発表:

3単位

抄録集

日本認知症ケア学会誌第24巻第1号が大会抄録集となります.会員の方には,5月中旬に送付いたします.購入をご希望の方は5月以降に事務センター(TEL:03-5206-7431)にご連絡ください.